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売れない商品が、突然売れ出す理由

ある家電メーカーの話です。

このメーカーは、これまで世の中になかった画期的な家電商品を発売しました。
当時としては非常に斬新で、関係者の間では「きっと売れるだろう」と大きな期待が寄せられていました。

ところが、実際に販売を始めてみると、思ったように売れませんでした。
品質が悪いわけでもなく、価格が極端に高いわけでもありません。
ただ、消費者の反応が鈍かったのです。

そこで、このメーカーは一つの思い切った決断をします。
それは、元の商品よりも50%以上高価な高級版を新たに投入する、というものでした。

売れていない商品の、さらに高いモデルを出す。
常識的に考えると、かなりリスクの高い判断に見えます。

しかし、この判断が結果的に大成功となりました。
高級版を発売したあと、最初に出していた商品が、驚くほど売れ始めたのです。

このとき起きていたのは、商品の価値そのものが変わったわけではありません。
変わったのは、消費者が判断するときの「基準」です。

高級版が隣に並ぶことで、
「こちらは高機能で高価格」
「こちらは機能を抑えているが、価格とのバランスが良い」
という比較が自然に生まれました。

人は、物の価値を絶対的に判断しているようで、実際には周囲との比較で判断していることが多いです。
このように、選択肢の出し方や並び方によって選ばれ方が変わる心理は、「選好逆転」と呼ばれています。

同じ考え方は、日常のビジネスでもよく使われています。

例えば、あるお弁当屋さんでは、本来売りたいのは490円の幕の内弁当でした。
そこで、次の3つの価格帯を用意しました。

450円
490円
690円

このように並べたところ、真ん中の490円が最も多く選ばれ、結果として全体の売上が大きく伸びたそうです。

真ん中の商品は、
安すぎて不安でもなく、
高すぎて手が出ないわけでもない。
何となく「ちょうど良い」と感じられやすい位置にあります。

この手法は、購入する側に明確な判断基準がない場合や、違いが分かりにくい商品に対して特に効果を発揮します。
専門知識がなく、感覚で選ばれやすい商品ほど、影響を受けやすい傾向があります。

とても高度な戦略に見えるかもしれませんが、実際には少し視点を変えるだけの工夫です。
商品そのものを大きく変えなくても、見せ方や選択肢の設計を変えるだけで、結果が動くことがあります。

売上が伸び悩んでいるときは、
「何を売るか」だけでなく、
「どう比べさせているか」
という視点を持ってみるのも、一つの有効な考え方かもしれません。

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