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ミルクシェイクの売れ行きが変わらなかった理由

―商品ではなく「状況」を見ると、顧客心理が一気に見えてくる―

あるファーストフード店の話がある。
「どうすればミルクシェイクがもっと売れるようになるのか?」
この問いに答えるため、店側は長期間にわたって徹底的な調査を行った。

まず取り組んだのは、“商品そのもの”の改善だ。
典型的なミルクシェイクの購入者に、次のような質問をしたのである。

・どの部分を改善すれば、もっと買いたくなるか
・値段がどれだけ下がれば購入したいと思うか
・もっと固めたほうが飲みやすいか
・フレーバーの種類が増えたらどうか

味、粘度、値段、バリエーション。
つまり、「ミルクシェイクそのもの」を中心に改良していった。

ところが、数ヶ月かけた努力にもかかわらず、売上は一切変化しなかった。

そこで調査チームは発想を変える。
「そもそも、来店客はなぜミルクシェイクを買うのか?」
商品ではなく、“購買理由そのもの”を探るアプローチに切り替えたのだ。


■商品を買う理由は「商品そのもの」にない

人は商品を買うのではなく、
商品を買うことで“何かを満たしたい”から行動する。

そこで調査チームは店頭に立ち、顧客の行動を観察した。

・来店時間
・服装や身なり
・一人か複数か
・購入商品
・店内で飲むかテイクアウトか

すると奇妙なパターンが浮かび上がった。
午前9時前後に、一人で来店し、ミルクシェイクだけを買って車で走り去る人が非常に多い。

彼らに理由を尋ねてみたところ、返ってきた答えは意外なものだった。

「仕事先まで長い運転時間が退屈で、何か気を紛らわせるものが欲しいんだ。
バナナはすぐ食べ終わるし、ドーナツは手がベタつく。ベーグルはパサパサして運転しながら食べられない。
ミルクシェイクなら飲み終えるまで時間がかかるし、昼前の空腹もほどよく抑えてくれる。」

つまり、彼らが買っていたのは“ミルクシェイク”ではなく、
退屈な運転の時間を埋める相棒だった。

ミルクシェイクの「用途」がまるで違うのだ。


■人口統計では説明できない「共通の状況」

さらに興味深い発見があった。
ミルクシェイクを購入する人には、性別・年齢・職業といった属性にまったく共通性がなかった。

共通していたのはただひとつ。

「午前中に満たしたい何かがある」という“状況”だけ。

また別のケースでは、小さな子供を持つ親が、まったく違う理由でミルクシェイクを買っていることが分かった。

子供は四六時中「抱っこ!」「買って!」「歩きたくない!」と要求をしてくる。
親はそのたびに「ダメ」と言わざるを得ず、自己嫌悪が積み重なる。

そんな中、たまには「イエス」と言ってあげたい。
休日くらいは“優しい親でいたい”。
その気持ちを満たすためにミルクシェイクを買うのだ。

同じ商品でも、朝のビジネスマンと育児中の親では理由がまったく違う。
だがどちらにも共通していることがある。

“商品を買うのは、役割を満たすため”ということだ。


■正しく売るためには「状況・顧客・満たしたいこと」の3つを見る

売上が伸びない時、よくやりがちなのは“商品機能を改善すること”だ。

しかし、顧客が求めているのは
商品ではなく、問題の解決である。

その解決策を見つけるために、次の3つを整理することが有効だ。

  1. 特定の状況

  2. 顧客

  3. 解決したいこと(満たしたいニーズ)

マーケティングの世界では当たり前だが、
多くのビジネスはここを深掘りせずに“感覚だけ”で動いてしまっている。

特定の状況とは、年齢や性別ではなく、
顧客の生活・背景・行動などを含む“ストーリーそのもの”だ。

このストーリーをより詳細に描けるほど、
誰に、何を、どのように売ればいいかが鮮明になる。


■商品ではなく「仕事をしているか」を見る

ミルクシェイクの例で分かったように、
人は商品を買うとき、商品そのものを求めているわけではない。

商品に“どんな仕事をさせたいか”で購入を決めているのだ。

・朝の運転の退屈を紛らわせる仕事
・昼まで空腹を抑える仕事
・子供に「イエス」と言うための仕事

だから、味や値段を変えるだけでは売上は変わらなかった。
顧客の“状況”に合わせて商品を提案すれば、売り方は無数に生まれる。

例えば――
朝の運転手向けに「スロードリンク仕様」のミルクシェイクを打ち出す。
子供を連れた親には“親子時間を作るスイーツ”として提案する。

どちらも同じ商品だが、売り方がまるで違う。
商品を変えなくても、売れる理由はいくらでも作れる。


■あなたのビジネスにも置き換えられる

今、扱っている商品やサービスがあるなら、
改めて次の3つを見直してほしい。

  1. 顧客が置かれている状況

  2. その顧客が誰か

  3. 何を満たしたいのか

この3つを深く見ていけば、
「売れている理由」と
「もっと売れる理由」が必ず見えてくる。

売り方に困ったら、
商品を見るのではなく“状況”を見ること。

これが、ミルクシェイクが教えてくれる本質だ。


今日のブログが参考になった人はぜひ、1歩でも実行してみてください!

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