あるオーディオシステムの興味深い話
あるオーディオシステムの話です。
このオーディオシステムは、
従来の製品では再生不可能だった音域を、
新しい技術によって再生できるようにしました。
技術的には、かなり革新的です。
しかし、売る段階で大きな壁にぶつかりました。
最初に使われていた訴求メッセージは、
次のようなものでした。
「この商品で、新しい音域が聴けます」
ところが、このメッセージは
ターゲットにまったく刺さらず、
ほとんど売れない状態が続いたのです。
ターゲットは「変化」を嫌う人たち
この商品のターゲットは、
熱心なオーディオファンでした。
オーディオファンは、
比較的保守的な人が多い傾向があります。
今まで使ってきた機材
今まで信じてきた音
今までの価値観
それらを否定されるようなメッセージには、
本能的に拒否反応を示します。
いわゆる、
「今までのままでいい」という心理です。
訴求メッセージを180度変えた結果
そこで、訴求の切り口を大きく変えました。
変更後のメッセージはこちらです。
「これ以外の商品では、
その音域を聴くことができません」
伝えている内容は、実は同じです。
しかし、結果はまったく違いました。
この一文に変えただけで、
商品は一気に売れ始めたのです。
なぜ一気に売れたのか?
ここで働いているのが、
損失回避性という人間の深層心理です。
人は無意識のうちに、
「得をすること」よりも
「損をすること」を強く避けようとします。
・手に入るかもしれないメリット
・失うかもしれない機会
この2つを並べたとき、
人は後者により強く反応します。
「新しい音が聴けます」
→ 得の話
「これ以外では聴けません」
→ 逃すと損をする話
この違いが、
行動を一気に引き出したわけです。
医療の例に見る「伝え方の怖さ」
もう1つ、分かりやすい例を出します。
もし、あなたが重篤な病気にかかり、
リスクの高い手術を受ける必要があるとします。
医師から、次の2通りの説明を受けたら、
どちらの手術を受けたいと思うでしょうか。
1.この手術は、死亡する確率が10%です。
2.この手術は、生存する確率が90%です。
おそらく、多くの人が
2を選ぶはずです。
しかし、冷静に考えると、
言っている内容は同じです。
違うのは、
どこに意識を向けさせているかだけ。
売れない理由は「商品」ではない
商品が売れないと、
多くの人はこう考えます。
・商品力が弱い
・価格が高い
・市場が悪い
しかし実際には、
伝え方が間違っているだけ
というケースが非常に多いです。
得を強調するのか
損を回避させるのか
この視点を持つだけで、
売上が一気に変わることがあります。
今日から使えるシンプルな視点
今扱っている商品やサービスについて、
こう問いかけてみてください。
「これを買わないことで、
お客さんは何を失うのか?」
この視点で訴求を組み立て直すと、
今まで反応がなかった商品が、
急に動き出すことも珍しくありません。
今日のブログが参考になった人はぜひ、
1歩でも実行してみてください!